News!! オウムの平田容疑者 逃亡の末出頭して逮捕 ≪刑事弁護士による事件解説≫

オウム真理教による仮谷清志さん(当時68歳)拉致事件で、警視庁に逮捕監禁致死容疑で逮捕された平田信容疑者(46)が接見した弁護士に対し、17年近くに及ぶ逃亡生活について、「ずっと国内にいた」と話していることがわかりました。

警視庁の捜査でも、平田容疑者が海外に渡航した形跡は確認されておらず、同庁は、国内で逃亡を支援していた人物がいるとみて、足取りの解明を進めています。

捜査関係者によると、平田容疑者は、1995年3月22日に行われた山梨県上九一色村(現富士河口湖町)の教団施設への一斉捜索の直前、教団から1000万円を受け取って逃亡し、その後、元看護師の女性信者(49)と一緒に行動していたことが確認されており、96年にはJR東京駅で一緒に東北地方に向かう姿が目撃されています 。
(読売新聞 1月4日3時20分配信)

逮捕監禁致死罪は殺人罪とは違うの?時効は成立していないの?
国内で逃亡していた場合と、外国にいた場合とでは違いがあるの?

今日は、逃亡と法律の関係について、素朴な疑問にお答えします。


Q1. 平田容疑者は、逮捕監禁致死罪で逮捕されたそうですが、逮捕監禁致死罪ってどういう犯罪ですか?殺人罪は時効が廃止されたと聞きましたが、逮捕監禁致死罪では時効はあるんですか?

A. 逮捕監禁致死罪とは、被害者を逮捕したり、閉じ込めるなどの監禁行為をした結果、被害者に死亡という結果が生じた場合に成立する犯罪です。
逮捕、監禁の際、被害者を殺そうとする意思があるときは殺人罪になります。
一方、殴る蹴るなどの暴行をする意思がある場合や、そうした暴行の結果、被害者が怪我をするかもしれないという程度の認識に止まる場合に、逮捕監禁致死罪が成立します。
この逮捕監禁致死罪については時効があり、犯罪行為が終わってから20年間が経過すれば公訴時効が成立し、刑罰を科されることはなくなります。


Q2. 平田容疑者は、16年間ずっと国内で逃亡生活を送っていたそうですが、海外で逃亡していた場合と、法律上なにか違いが生じるんですか?

A. 国外に逃亡していた場合には刑事訴訟法255条により、「時効はその進行を停止する。」ことになり、海外にいた期間は時効期間から控除されることになります。
国内に戻り、控除された残りの期間を経過すれば時効は成立しますが、逆に、この条文上は国内では時効の進行が停止しないことになります。
しかし、仮谷さん拉致事件では、共犯者が逮捕監禁致死罪で起訴されて裁判を受けていますが、共犯者が裁判を受けている場合には、その間、時効の進行が停止し、裁判確定後に再び時効が進行します。
ですから平田容疑者はあと3年間逃亡したとしても時効は成立せず、その期間に加えて共犯者の起訴から確定までの期間を経過しなければ時効にはなりません。


Q3. 平田容疑者は、逃亡当時から指名手配されて全国的にも有名だったと思うのですが、平田容疑者が指名手配されていることを知りながら逃走を手助けした人がいた場合、手助けした人は何らかの罪に問われるんですか?

A. 罰金以上の刑にあたる罪を犯した者を蔵匿、つまり、犯人をかくまった場合には犯人蔵匿罪が成立し、かくまう以外の方法で逃亡を助けた場合、たとえば資金援助などした場合には犯人隠避罪が成立します。
犯人隠匿罪、犯人隠避罪のいずれも2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられます。
逮捕監禁致死罪は、懲役刑にあたる罪ですので、平田容疑者を匿ったり、資金援助などをすれば、それぞれ犯人蔵匿、犯人隠避罪が成立することになります。
もっとも、容疑者の親族がこれらの行為をした場合、刑が免除されることもあります。


Q4. 平田容疑者は、自ら警視庁に出頭したけれど受け付けてもらえず、その後自ら丸の内署に出向いたと聞いています。よく、「自首すれば罪が軽くなる」と言われているのを聞きますが、平田容疑者が出頭したことで、自首にあたって罪が軽くなることはあるんですか?

A. 自首は「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる(刑法42条1項)」と規定されています。
捜査機関に発覚する前でなければ自首の要件を満たしませんし、自首は犯人が捜査機関に対して自発的に犯罪事実を申告して訴追を求める意思がなければなりません。
ですから、平田容疑者の場合、指名手配されていますし、出頭時、一部事実を否認しているので、いずれの要件も満たしていないことになり、自首は成立せず、刑が軽減されることはありません。

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