小樽資産家女性殺人事件 → 逮捕された女性社長が、処分保留で釈放 《解説コメント》

【ニュース】
北海道小樽市で7月、1人暮らしの資産家女性(81)が殺害された事件で、札幌地検は7日夜、殺人容疑で逮捕された同市の不動産業、広岡久子社長(62)を処分保留で釈放しました。広岡社長は、一貫して殺人を否認し、逮捕後は黙秘を続けて、この日が拘留期限でした。殺人容疑で逮捕されながら責任能力とは無関係に釈放される のは異例です。担当検事は「起訴できるだけの証拠がそろっていない。任意で捜査は続ける。」と説明しているが、担当弁護士は「誤認逮捕だ」と捜査当局を批判しています。(毎日新聞10月8日1時42分配信)

逮捕されても釈放されるのはどんな場合なのか?
本当に誤認逮捕だったら、これからどうなるのか?

今日は、逮捕にまつわる刑事手続きの素朴な疑問にお答えします。


■ Q1. 殺人事件で容疑を認めず、反省していない被疑者でも釈放されるんですか?

A. 逮捕・勾留には、刑事訴訟法によって、厳格な期間制限の規定が設けられています。この期間制限の中で、起訴できるだけの証拠が収集できない場合は、被疑者を釈放するほかありません。
これは、被疑者が反省していない場合でも同様です。
そもそも、マスコミ報道からは「反省していない被疑者」に見える場合でも、真実は、えん罪による誤認逮捕かもしれません。
有罪判決を求めて起訴できるだけの証拠がないにも関わらず、「容疑を認めず、反省していない」という理由だけで、法律を捻じ曲げて逮捕・勾留を継続することはできません。

検察官は、逮捕・勾留によって被疑者の身柄を拘束した場合、時間的な制約の下で捜査を実施し、身柄拘束期限までに起訴、不起訴を決することになります。
殺人という重大事件であれば、一定の容疑が認められる以上、身柄拘束は避けられないでしょう。
もっとも、過去の歴史に鑑み、憲法は国民に人身の自由を保障し、逮捕・勾留は厳格な法律の期間制限の中でのみ許されるというのが、日本の法の立場です。
今回ように、被疑者である広岡社長が、事実を認めず否認している場合で、身柄拘束期限までに十分な証拠が揃わない場合には、検察官は被疑者を起訴できずに、釈放するほかありません。
今後は、嫌疑不十分として処分保留のまま釈放し、在宅事件として捜査を続行していくことになります。


■ Q2. 「処分保留のまま釈放」とはどういうことですか?

A. 「処分保留のまま釈放」とは、検察官が、被疑者の身柄拘束期限までに、起訴、不起訴を決することができない場合に、検察官が、起訴処分または不起訴処分とするかの判断を留保し、被疑者を釈放することをいいます。
処分保留のまま釈放した後は、通常、被疑者を釈放した状態で捜査を継続することになります。


■ Q3. 捜査本部は、今後は在宅で捜査を続けると言っているそうですが、「在宅で捜査」ってどういうことですか?釈放されたのに、まだ取り調べは続くんですか?

A. 「在宅で捜査」とは、被疑者の身柄を拘束しない状態で捜査を行うことをいいます。
分かりやすく言えば、在宅捜査だと、被疑者は自宅で通常の生活を送りながら(在宅)、捜査機関から呼び出しがあった場合に、任意で出頭し、取り調べを受けることになります。

そもそも、捜査には、強制捜査と任意捜査という2つの種類があります。
強制捜査は、被疑者の身柄を拘束した状態で行われるもので、法律上、時間的な制約が設けられています。
これに対し、任意捜査は、被疑者の身柄を拘束しない状態で行われるものなので、被疑者が自宅にいる状態であっても捜査の対象となります。

捜査は、検察官が被疑者を起訴して刑事裁判を行うかどうかを決め、刑事裁判になった場合に、犯人と考えられる被告人に適正な刑を求めるために行われるものです。
今回の事件は、検察官が、事件を起訴するかどうかという刑事処分を決する前なので、最終的な処分を決するため、釈放されても被疑者である広岡社長の取り調べは行われることになるでしょう。

(続く)

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