強制わいせつ罪で起訴、科学警察研職員に無罪 アトム東京法律事務所

(2010年3月5日11時56分 読売新聞)

知人女性の体を触ったなどして強制わいせつ罪に問われた千葉県柏市警察庁科学警察研究所職員の男性被告(45)(起訴休職中)の判決が4日、千葉地裁松戸支部であり、沖敦子裁判官は「(被害者とされる)女性の証言が信用できない」として無罪を言い渡した。


 男性は2008年7月31日夕、同県内の知人女性宅で女性の体を触ったなどとして、同年9月、柏署に逮捕され、同年12月に在宅起訴された。
しかし、公判で男性は「女性がふらついて倒れてきたので体を支えただけ」と一貫して否認していた。

(引用元:http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100305-OYT1T00575.htm)


 強制わいせつは6月以上7年以下の懲役に処せられます。

 この犯罪は暴行又は脅迫を手段としてわいせつ行為を行うことですが、主観的には女性の性器等に触れる認識のほか、犯人の性欲を刺激興奮させたり、満足させるという性的な意図が必要とされています。

 本件でのわいせつ行為の態様が判然としませんが、もともと目撃者のいないような場所での行為であれば、犯罪を立証する証拠としては被害者の供述しかありません。

 被告人と被害者との関係、犯行前後の言動、告訴の経緯、説明の一貫性など様々な要素を考慮して、被告人と被害者の供述のいずれが信用できるのかが最大の問題です。

 被告人が、逮捕勾留を経て釈放されて3カ月余り後に起訴されるに至ったことを考えると、検察官は、捜査段階から被害者女性の話が間違いないと確信できたわけではなかったはずです。

 無罪になった男性は、一貫して「体を支えていただけ」と話していたようですが、一貫性ある説明は極めて信用しうるものです。

 とかく一般的には被害者がうそをいう必要性がないので、被害者と容疑者との話を比較した場合、被害者の話を間違いないと思いがちですが、
話の食い違いは、どちらかが勘違いなり、うそを言っているということであり、信用できる話は客観的な事実と符合し、自然かつ合理的な内容で一貫性があります。

 このような事案で無罪となれば、被告人はもとより、被害者に対するダメージも大きなものとなりますので、被害者に無罪の可能性を十分説明した上で起訴を回避することが最良の選択のように思えます。

 犯罪被害者参加制度をはじめ、犯罪被害者の保護立法が整備され、刑事手続きの中で被害者の地位も確立されつつありますが、犯罪立証の中心となる被害者の供述の吟味は捜査、公判段階を通じてより慎重になされる必要があるでしょう。