明石歩道橋事故、検察審査会が初の「強制起訴」議決 アトム東京法律事務所

(2010年1月28日 読売新聞)
兵庫県明石市で2001年7月に起きた歩道橋事故で、神戸第2検察審査会は27日、業務上過失致死傷容疑で書類送検され、神戸地検が4度不起訴にした明石署の榊和晄(かずあき)・元副署長(62)(退職)について「起訴議決」をし、公表した。改正検察審査会法施行後、起訴を求める議決は2度目で、規定により神戸地裁が指定する弁護士が業務上過失致死傷罪で起訴する。最高裁によると、改正法に基づいて起訴議決され、強制起訴になるのは全国で初めて。

 市民から選ばれた11人で構成される同審査会は、議決書でまず、基本的立場が検事とは異なると明言し、「有罪か無罪かの検事と同様の立場ではなく、市民感覚の視点から、公開の裁判で事実関係及び責任の所在を明らかにして、重大な事故の再発防止を望む点に置いている」とした。

 過失の有無については、地検が同署元地域官・金沢常夫被告(60)(上告中)らを事故当日の注意義務違反だけで起訴した点を「理解できない」とし、事前の警備計画段階も含めて検討。

 ▽歩道橋には多数の人が殺到し、激しく滞留することが予想された▽警備計画には混雑防止の有効な方策がないとの認識があった▽事故当日も現場警官との無線などのやり取りから事故の危険が具体化していることを予見できた――などとし、予見可能性を肯定した。

 さらに署内のビデオカメラで滞留を見ており、現場の警官らに対処させる規制措置の義務を果たしていれば事故は回避できたのに、何ら指示せず漫然と放置した、などと過失を認定した。

 公訴時効(5年)の経過については、議決書は元副署長と金沢被告は共犯に当たるとし、「共犯が起訴され、判決が確定するまで時効は停止される」という刑事訴訟法の規定から時効の停止を認めた。共犯の理由として「上命下服の警察組織の中で同じ署内で直属の上司、部下の関係にあり、注意義務も同じ」と述べた。

 議決書には元副署長の犯罪事実も記載しており、指定弁護士は、これに基づいて起訴状を作成。必要なら、地検に協力を求めて補充捜査し、公判も担当して起訴状朗読や冒頭陳述、論告求刑など検事役を務める。

(引用元:http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20100128-OYO1T00250.htm?from=top)


 刑法38条は、「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。」と規定し、原則として故意犯のみを処罰の対象としています。ただし書きとして、法律に特別の規定がある場合は、この限りではないと定め、刑法211条等で業務上過失傷害罪等の過失犯を規定し、業務上過失傷害罪は5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処すとしています。

 過失犯の処罰は例外的で、「殺す」とか「盗む」などという故意犯と異なり、過失犯の「注意義務」の中身が多様であいまいな点があるという特徴があります。

 この事故における副署長の刑事責任を問う前提として、副署長としての地位、権限を明らかにして、雑踏警備に当たり、副署長として本来具体的にすべきことは何だったのか、それは副署長であれば誰もがすべきことなのか、現場にいない副署長の行為により事故を未然に防止する可能性があるのかなど、さまざまな問題があることは間違いありません。

 また、業務上過失傷害罪の公訴時効は5年と定められています。
 副署長を起訴するときに、副署長の部下である地域官と過失を共同したとするなど共犯関係を明示し、共犯と認められなければ、裁判所は、時効が完成したとして免訴を言い渡すことになります。

 この免訴は、裁判をする前提(訴訟条件)を欠くときの門前払いの判決です。

 この免訴判決をするときには、具体的な審理には入りませんので、検察審査会で「事実関係及び責任の所在」を明らかにすることはできません。

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