刑務所にはいつ、どのタイミングで収監されるのか? 押尾学事件を通じて

犯罪を犯してしまい、刑事裁判で懲役刑の有罪判決が下されれば、執行猶予にならない限り、刑務所に入らなければなりません。
しかし他方で、世の中には、懲役刑の実刑判決を受けたにも関わらず、しばらくは刑務所に入らずに、社会の中で普通に生活している人がいます。

なぜでしょう。

懲役刑の実刑判決を受けた場合、刑務所には、いつ、どのタイミングで入ることになるのか。
押尾学被告の事件を通じて考えてみましょう。

まず、最初の裁判で懲役刑の実刑判決が下されたとしても、直ちに刑務所に入る必要はありません。
日本の裁判制度では、三審制(さんしんせい)と言って、三度まで判決の内容に不服を申し立てることができるからです。
つまり、?三度目の裁判でも実刑判決が維持され、制度上これ以上争えなくなった場合、もしくは?一度目又は二度目の裁判で諦めてしまい、期限内に不服を申し立てなかった場合に、実刑判決が確定し、刑務所に入る必要が出てきます。

押尾学被告の事件は、?のケースです。押尾学被告は、第二審の判決を不服とし、上告を申し立てたため、刑務所への収監は、この上告が棄却されるまで行われません。
ニュースによると、先日3月13日付けで上告が棄却されたということですので、押尾学被告の収監は間もなくということになります。

では、具体的には、いつ、どのような手続きで刑務所に収監されるのでしょうか。

まず、上告が棄却されたとしても、判決は直ちには確定しません。弁護側は、上告棄却決定に対して異議を申し立てることができるからです。
この異議は、上告棄却の決定が被告人に送達されてから、送達の日を含めて4日以内に行わなければならず、もしこの期間内に被告人が異議を申し立てなければ、その時点で判決が確定します。
また、この異議を申し立てたとしても、これが認められなければ、同じくその時点で判決が確定します。

押尾被告の事件の場合は、3月13日付けで上告が棄却されたということなので、仮に翌14日に押尾被告に決定が送達されていれば、異議申し立ての期限は本日17日までということになります。
異議を申し立てたか否かは、ニュースでは明らかでありませんが、異議を申し立てていなければ本日判決が確定し、異議を申し立てていれば、審理に2〜3週間ほどかかるのが通常なので、2〜3週間後に判決が確定することになります。

なお、上告棄却決定に対する異議申し立ては、過去、上告棄却の時点で被告人が死亡していた等の特殊な事例でしか認められていないため、本件では、仮に押尾被告が異議を申し立てたとしても、これが認められる可能性はゼロに等しいです。
では、判決が確定した後は、具体的にどのようなスケジュールで収監されるのでしょうか。

この点、押尾被告の事件の様に、上告審で保釈が認められている事件においては、実務上、判決の確定から収監まで2〜3週間ほどのタイムラグが生じるのが通常です(ライブドア堀江被告の事件でも同様でした)。
判決が確定したとしても、急に逮捕されるかの様に、直ちに刑務所に行く必要はありません。その後も2〜3週間は社会内で保釈時と同様の生活を続け、身辺整理を行うことができます。実際の収監は、東京高等検察庁から呼び出しがかかり、これに応じて出頭した時から始まることになります。

東京高等検察庁に出頭した後は、護送車で東京拘置所に送られ、受刑者としての生活を送ることになります。
「受刑者としての生活」では、判決が確定する前の「被疑者・被告人としての生活」とは異なり、手紙の発信や知人との面会が著しく制限されます。
そのため、知人らと連絡を取りたい場合は、収監の前に済ませておく必要があります。その後、どの刑務所でどのような作業を行うのが適切かを判断するため、面談調査などが行われ、配属先の刑務所が決定されます。

押尾被告の場合は、今回が初の収監ということもあり、犯罪傾向が進んでいない者として、懲役8年未満の受刑者が集まる刑務所に入ることになりそうです。

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