解説コメント|声優の鈴池静容疑者(43)が傷害致死罪で逮捕された事件、自動虐待関連事件

【ニュース】
自宅で里子を虐待死させたとして、声優の鈴池静容疑者(43)が傷害致死罪で逮捕された事件で、暴行を加えた里子の女児(3)を寝室で寝かせ、後から死んだのに気づいて階段からの転落死を偽装した疑いがあることが分かりました。警視庁は、21日鈴池容疑者を送検しました。(産経新聞8月22日7時56分配信)

当時2歳の長男の背中に熱湯をかけ大やけどを負わせたとして、千葉県警は父親(24)を傷害の疑いで逮捕しました。(読売新聞 8月23日06時41分配信)

児童虐待のニュースが後を絶ちませんが、「暴行」「傷害」「保護責任者遺棄致死罪」など、問題となっている行為の態様や罪は様々です。

暴行して死亡させた場合は殺人罪にならないのか?
熱湯をかける行為は「暴行」にあたるのか?
今日は、児童虐待に関する素朴な疑問にお答えします。


■ Q1. 子供に暴行を加えて死亡させた事件で、容疑者は「傷害致死罪」で逮捕されたそうですが「殺人罪」にはならないんですか?「傷害致死罪」と「殺人罪」の違いは何ですか?

A. 同じ人の死という結果が発生しても、暴行により人が死ぬということを認識していなければ、傷害致死罪になります。一方、人が死ぬということを認識していながら暴行を加えれば、殺人罪になります。
「この程度の暴行であれば、人が死ぬことはないだろう。」「死という結果が発生しないだろう。」という心理状態であれば、仮に暴行を加えたことによって相手が亡くなってしまったとしても、傷害致死罪が問われるに過ぎません。
今回、暴行によって里子を死亡させてしまった事件でも、今のところ容疑者は里子が死ぬという結果を認識していた供述はしていないようですので、傷害致死罪が問題になっていると言えます。


■ Q2. 子供に熱湯をかける行為が「暴行」にあたるそうですが、殴ったり蹴ったりしなくても「暴行」になるんですか?

A. 刑法では、「暴行」とは人の身体に対する有形力の行使をいいます。つまり、人に向けて物を投げたり、手で殴ったりすれば物理的な力を加えたことになり、有形力の行使があると言えます。また、光、電気、熱等のエネルギー作用を身体に及ぼすことも暴行に当たると解されています。
過去には、相手に向かって大音量の音を鳴らし続けたことが、暴行にあたると判断された裁判例があります。
ですから、熱湯をかける行為は、物理的な有形力の行使があるといえるでしょう。


■ Q3. 暴行を加えて子どもに怪我を負わせた場合、「傷害罪」が成立すると聞きました。
「暴行罪」と「傷害罪」では刑の重さが違うそうですが、どの程度から「傷害罪」で処罰されるようになるんですか?

A. 刑法は、暴行を加えたけれど相手に傷害を加える程ではなかった場合は、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処すると定められています。同時に、人の身体を傷害した場合は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処すると規定されています。
ここで傷害とは、人の生理的機能に障害を与えること、つまり、相手に怪我をさせたり、体調を損なわせるなど、健康状態を悪化させてしまうことを言います。軽微な傷害と暴行の区別は、実際上困難ですが、一応の目安としては、?日常生活に支障をきたさないこと、?傷害として意識されていないか、日常生活上見過ごされるよ うな程度であること、?医療行為を特別必要としないこと、の3つの要件を満たす時は暴行にとどまるという裁判例があるので、参考になります。
実務では診断書、傷害部位の写真、血の付いた衣服、被害者の供述調書などの証拠の有無によって、怪我が認められるときは傷害罪となります。


■ Q4. 最近児童虐待のニュースをよく見るように思うのですが、日本ではどのくらいの数の児童虐待が起きているんですか?

A. 平成21年度中に、全国の児童相談所(平成21年中は201か所)が児童虐待相談として対応した件数は44,210件で、従来で最多となっています。
平成20年4月から、長期間子供の姿が確認できない家庭に対して、裁判所の許可があれば捜索などができる制度が導入されましたが、これに基づいて親が出頭を求められたケースは21件、捜索が行われたケースは1件でした。
一方で、平成20年4月1日から平成21年3月31日までの間に、虐待による死亡事例(心中を除く)は64件・67人に上りました。内訳を見ると、0歳児が39人(59.1%)と最も多く、中でも0か月児が26人と集中しています。
(参考資料:厚生労働省 児童虐待相談対応件数及び児童虐待等要保護事例の検討結果(第6次報告概要))

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