傷害事件の量刑−加害者が初犯の場合  アトム東京法律事務所

弁護士の岡野です。
本日は傷害事件について。

刑法204条は、傷害罪について、
「人の身体を傷害した者は、
15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
と規定します。


★ 傷害の程度が軽い場合
加害者が初犯の場合、
被害者の傷害の程度も軽く、事実を認め反省しているということであれば、
事件は略式手続により50万以下の罰金で処理される場合が多いです。

略式手続とは、
刑事裁判に出廷することなく、書面上で審理を終わらせ、
罰金刑に処せられる手続きをいいます。

略式手続は、事実関係に争いがない場合にのみ適用されるため、
加害者側が不合理・不自然な言い訳をしている場合には適用されません。
この場合は、起訴され、刑事裁判で審理を尽くすことになります。


★ 傷害の程度が重い場合
一方で、加害者が初犯であっても、傷害の程度が重い場合は、
刑事裁判となり、法廷で懲役刑が求刑されることになります。

判決で執行猶予が付くかどうかは、
暴行・傷害の程度、示談の有無等が総合的に考慮されて決められますが、
加害者側としては、第一に被害者に対する謝罪、被害弁償を検討すべきです。

暴行の悪質さや傷害の程度は、もはや変えられない事情ですが、
被害者に対する対応や被害者の処罰感情は、
裁判の終了までに良い方向に変えることが可能です。

また、裁判上で、被害者が加害者を許す意思を表明した場合、
裁判官としても、事案がよほど悪質でない限り、実刑判決を下すことはなく、
事件は執行猶予付きの判決で終結する場合が多いです。


★ 以下、加害者が初犯の場合の量刑資料です。
参考までにどうぞ。

●被害者の頭部を手拳で多数回殴打する。
全治7日の顔面打撲、歯破損の傷害を負わす。
示談が成立し、被害者が加害者を許す。
(判決)懲役1年6月、執行猶予3年

●被害者のの大腿部を果物ナイフで刺す。
全治9日の左大腿部挫創の傷害を負わす。
示談が成立する。
(判決)懲役1年、執行猶予4年

●被害者の顔面を手拳で数回殴打する。
全治14日の右眼球打撲、顔面打撲の傷害を負わす。
見舞い金の支払いあり。
(判決)懲役8月、執行猶予3年

●被害者の頭部付近をミニ鎌で数回切り付ける。
全治14日の頭部切創、頚部切創の傷害を負わす。
(判決)懲役1年4月、実刑

●被害者の背後から左胸部を果物ナイフで刺す。
全治15日の左血気胸の傷害を負わす。
(判決)懲役2年8月、実刑

●被害者の顔面を手拳で殴打する。
全治28日の顔面挫創、頬骨骨折の傷害を負わす。
事件は被害者の挑発によるもので、示談の申し入れもあり。
(判決)懲役1年、執行猶予3年

●被害者の顔面を手拳で多数回殴打する。
全治30日の鼻骨骨折の傷害を負わす。
事件に際しては、被害者側からの暴行もあり。
(判決)罰金30万円

●被害者の頭部を角材で殴打する。
全治72日の頭部挫創、助骨骨折の傷害を負わす。
加害者は自首し、弁償金20万円を支払う。
(判決)懲役1年2月、実刑

●被害者の顔面を肘打ちする。
全治87日の左眼球打撲の傷害を負わす。
加害者は被害弁償として80万円を供託する。
(判決)懲役1年4月、執行猶予3年

●被害者の顔面を肘打ちする。
全治180日の肝臓破裂、膵臓挫傷の傷害を負わす。
被害者は娘で、児童虐待の事案。
(判決)懲役4年、実刑

●被害者顔面を肘打ちする。
全治不明の肝損傷の傷害を負わす。
示談の申し入れは行ったが、示談不成立。
(判決)懲役4年、実刑

(量刑調査報告集?−第一東京弁護士会、刑事弁護委員会−などを整理したもの)
(全治と加療は区別せず「全治○日」との表記で統一)

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