職務質問と刑事弁護2    アトム東京弁護士事務所

職務質問

職務質問は「任意捜査」の一つであるといわれています。

実は、捜査には「任意捜査」と「強制捜査」という二種類が存在します。
後者は、法律の根拠がなければしてはいけないもので、たとえば「捜索」や「差押
え」などといったものがあります。

この任意捜査と強制捜査の違いが何かというと、強制捜査は「重要な利益の侵害があ
る場合」だと考えられています。

このことの裏返しで、任意捜査は「重要な利益侵害がない場合」といえます。

基本的には任意捜査は本人の同意に基づいた任意なものといえます。
(同意がない場合でも任意捜査として認められるものの例として、公道にいる被疑者
の写真撮影やビデオ撮影などがあげられます。)
任意捜査なのですから、職務質問に応じる義務というのは法的にはありません。

では、職務質問から逃走した場合はどうなるのでしょうか。
警察官は逃げる不審者に対して何もすることはできないのでしょうか。それでは何と
なくおかしい気がしますよね。
でも、だからといってまだ容疑者でもない人を拘束して連行する、というのも行き過
ぎですね。

ここで、たとえば逃走する人の腕を警察官がつかんで逃走を妨害する程度のことは許
されるのか、という問題が生じてきます。

このような警察官の「有形力の行使」について、判例最判昭和51年3月16日)は以
下のように言っています。

「捜査において強制手段を用いることは、法律の根拠規定がる場合に限り許容される
ものである。しかしながら、ここにいう強制手段とは、有形力の行使を伴う手段を意
味するものではなく、
個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現す
る行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味するも
のであって、
右の程度に至らない有形力の行使は、任意捜査においても許容される場合がある。
ただ、強制手段にあたらない有形力の行使であっても、何らかの法益を侵害しまたは
侵害するおそれがあるのであるから、状況のいかんを問わず常に許容されるものと解
するのは相当ではなく、
必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもので相当と認められる限度にお
いて許容される」

つまり、その事情の中で、その有形力の行使の必要性・緊急性・相当性があるといえ
る場合には有形力の行使が認められるのです。

ですから、どの程度の有形力の行使なら許される、とは一概にはいうことができませ
ん。
ケースバイケースで決められるということです。

警察官の有形力の行使が適法な場合は、適法な職務といえますから、これに対して殴
るなどの暴行を加えた場合には職務執行妨害罪(刑法95条)が成立することになるの
です。

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