横浜地検川崎支部 刑事弁護士活動

本日夜と明日の朝は、神奈川方面に接見です。
今週末も忙しくなりそうです。

5/22現在、私の知り得る限りで、
裁判員裁判対象事件が全国で5件起訴されています。

●青森1件
・強盗傷害
●秋田1件
・現住建造物等放火未遂
●千葉2件
・殺人未遂
・強盗傷害
●鹿児島1件
・強姦致傷罪


本日も裁判員制度について解説いたします。

裁判員制度の対象事件
全ての事件が裁判員裁判の対象となる訳ではありません。
裁判員裁判の対象となる事件は、
地方裁判所で行われる第一審の内、
次の2つに分類されるような
特定の重大な犯罪に関するものに限定されています。

1.法定刑に、死刑、無期懲役、無期禁錮がある罪
 <例>
 ・現住建造物等放火
 ・通貨偽造・同行使
 ・強制わいせつ致死傷
 ・強姦致死傷
 ・殺人
 ・身の代金目的拐取
 ・強盗致死傷、強盗殺人、強盗強姦
 ・覚せい剤取締法違反
 ・銃刀法違反
 など

2.合議体で審理しなければならない事件の内、
  故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪
 <例>
 ・危険運転致死
 ・傷害致死
 ・遺棄等致死
 など

ただし、上記対象の事件でも、
裁判員に危害が加えられる恐れがあり、
且つ裁判員の参加が難しい場合は、
裁判員裁判の対象から除外され、
裁判官のみの構成によって審理されます。
これには、過度に裁判員に負担をかけないようにする、
裁判の公正さを保つ、
裁判員制度に対して国民に過度の不安を抱かせないようにする
といった目的があります。

”危害が加えられる恐れがある”の要件については以下の通りです。
1.被告人の言動によって
2.裁判員の生命に危害が加えられるおそれがあり
3.そのため、裁判員が畏怖しているとき

1については、
被告人が暴力団構成員であったり、
平素の素行が悪い等の抽象的な事実だけでなく、
実際に裁判に関係する人が、
被告人やその関係者によって脅迫された等の言動が必要です。

2については、
裁判員のほか裁判員候補者やその親族も対象になります。
また、それらの人々の生命・身体・財産に危害が加えられる恐れ、
または生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあることが条件です。

3は、
裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあることをさします。

上記手続きは、
裁判所の職権、または検察官、被告人、弁護人の請求よってなされます。
ただし、どの場合においても、
検察官および被告人または弁護人の意見を聴くことが必要です。
事件を対象から除外するかどうかの決定には、
事件の審判に関与している裁判官は関与できません。

 
以下、裁判員裁判の主要な対象事件を細かく記載しておきます。
興味がある方はご覧ください。

★死刑又は無期に当たる罪(刑法犯)
・現住建造物等放火 (刑法第108条)
・激発物破裂(108) (刑法第117条第1項前段)
・往来危険による汽車転覆等致死 (刑法第127条、第126条第3項)
・現住建造物等浸害 (刑法第119条)
・電汽車転覆・艦船転覆 (刑法第126条第1項、第2項)
・汽車転覆等致死 (刑法第126条第3項)
・電汽車往来危険転覆,艦船往来危険転覆 (刑法第127条)
・水道毒物等混入致死 (刑法第146条後段)
・通貨偽造・同行使 (刑法第148条第1項、第2項)
詔書偽造・同行使 (刑法第154条第1項、第2項、第158条第1項)
・偽造詔書等作成・同行使 (刑法第156条、第158条第1項)
・強制わいせつ致死傷 (刑法第181条第1項)
・強姦致死傷 (刑法第181条第2項)
・集団強姦等致死傷 (刑法第181条第3項)
・殺人 (刑法第199条)
・身の代金目的拐取 (刑法第225条の2第1項)
・拐取者身の代金取得等 (刑法第225条の2第2項)
・強盗致傷 (刑法第240条前段)
・強盗致死(強盗殺人を含む) (刑法第240条後段)
・強盗強姦 (刑法第241条前段)
・強盗強姦致死 (刑法第241条後段)
以上のほか、上記各罪の未遂処罰規定による罪(例:殺人未遂) 

★死刑又は無期に当たる罪(特別法犯)
・営利目的による覚せい剤の輸出入又は製造 (覚せい剤取締法第41条第2項)
・航空機の強取等 (航空機の強取等の処罰に関する法律第1条第1項)
・航空機強取等致 (航空機の強取等の処罰に関する法律第2条)
・航行中の航空機を墜落させる等の罪航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律第2条第1項,第2項
・航空機墜落等致死 (航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律第2条第3項)
・業務中の航空機の破壊等致死 (航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律第3条第2項)
・業として行う不法輸入等 (国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律第5条)
サリン等の発散 (サリン等による人身被害の防止に関する法律第5条第1項)
・けん銃等の発射 (銃砲刀剣類所持等取締法第31条)
・営利目的によるけん銃等の輸入 (銃砲刀剣類所持等取締法第31条の2第2項)
・組織的な殺人 (組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第3条第1項第3号、第2項)
・組織的な身代金目的略取等 (組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第3条第1項第6号)
・常習強盗傷人・常習強盗強姦 (盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律第4条)
・爆発物使用 (爆発物取締罰則第1条)
・加重人質強要 (人質による強要行為等の処罰に関する法律第2条)
・加重人質強要(航空機の強取等の罪を犯した者による人質強要) (人質による強要行為等の処罰に関する法律第3条)
・人質殺害 (人質による強要行為等の処罰に関する法律第4条)
・営利の目的による銃砲の無許可製造 (武器等製造法第31条第2項)
・営利の目的によるジアセルモルヒネ等の輸出入,製造 (麻薬及び向精神薬取締法第64条第2項)
・流通食品への毒物混入等致死傷 (流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法第9条第2項)
高速自動車国道における往来危険による自動車転覆等致死 (高速自動車国道法第27条第2項後段)
事業用自動車転覆等致死 (道路運送法第101条第2項後段)
・自動車道における往来危険による自動車転覆等致死 (道路運送法第102条、第101条第2項後段)
・決闘殺人 (決闘罪に関する件第3条、刑法第199条)
放射線の発散等 (放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律第3条第1項)
以上のほか、上記各罪の未遂処罰規定による罪

★法的合議事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪(刑法犯)
・ガス漏出等致死 (刑法第118条第2項、第205条)
・往来妨害致死 (刑法第124条第2項、第205条)
・浄水汚染等致死 (刑法第145条、第205条)
・特別公務員職権濫用等致死 (刑法第196条、第205条)
傷害致死 (刑法第205条)
危険運転致死 (刑法第208条の2)
・不同意堕胎致死 (刑法第216条、第205条)
・遺棄等致死 (刑法第219条、第205条)
・逮捕等致死 (刑法第221条、第205条3)
・建造物等損壊致死 (刑法第260条後段、第205条)

★法的合議事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪(特別法犯)
・決闘傷害致死決闘罪に関する件第3条,刑法第205条

岡野